猿一匹 酔って候

Live-up Works(リブアップ・ワークス)主宰、大西啓介のブログ。2012年からフリーライターとして活躍。企業のPR媒体から、ごみ、リサイクル問題、老人福祉などの分野をメインに取材・執筆活動を行う。現在は東京都豊洲市場に出入りして水産分野でも活動中。

江戸時代の介護 ~編集後記

まず初めに、2月号の更新が大幅に延びてしまったことをお詫び申し上げます。

今回の特集は「江戸時代の養老と介護」。はるか昔、江戸時代の人たちはどのように高齢者をケアしていたのか? という素朴な疑問から今回の特集を組むことになりました。

特集:江戸時代の養老と介護 Part1 | 介護の応援マガジン Live-up works

正直参考文献が限られており、何か手がかりがあるかも… と期待していた江戸東京博物館(東京都墨田区)は改装工事中のために結局来訪できずでした。

記事を作成していて感じたのは、江戸時代、「年配者は敬うべき存在」という意識が徹底されていたこと。もちろん家族の間でもそうですが、長屋暮らしの独居老人の世話をしていた隣人のエピソードを聞くと、人と人との距離が本当に近かったんだなと思います。

また幕府も、自分の親、祖父母といった具合に先祖を敬うような政治方針を推奨していたこともわかりました。これは極めて儒教的な思想と言えなくもないですが、昨今ニュースを賑わせている、子どもが親を殺すまたはその逆パターンなど、耳を疑いたくなるような事件が頻発している現状を考えると、この時代の人たちの思想や政治方針がいかに自然かつ健全なものだったかがわかります。江戸時代の人たちがこの手のニュースを知ったらどれだけショックを受けるでしょうか。

具体的な介護に言及すると、お金持ちの商家や武士は使用人を雇い、年老いた自分の両親や祖父母の介護を依頼していました。しかしそれは部分的な話であって、金持ちもそうでない人も、基本的に家族で高齢者をケアするという不文律が存在していました。

現在は核家族化や女性の社会進出が当たり前のようになっており、一昔前のような家族ケアが難しいものになってしまいました。そして時期を同じくして介護関連の法整備が進み、あらゆる介護サービスが萌芽してきました。ただ江戸時代の人たちが大切にしていた年配者への敬意や家族の絆が、時代とともに薄らいできているような気もします。

おじいちゃん、おばあちゃんがいるから自分の親がいる。両親がいるから自分がいる。こんな当たり前のことでも、自分がなぜこの世に存在するのか、そう考えただけでも先祖への感謝そして家族のという存在の尊さが自然とわかってくるものではないでしょうか?