猿一匹 酔って候

Live-up Works(リブアップ・ワークス)主宰、大西啓介のブログ。2012年からフリーライターとして活躍。企業のPR媒体から、ごみ、リサイクル問題、老人福祉などの分野をメインに取材・執筆活動を行う。現在は東京都豊洲市場に出入りして水産分野でも活動中。

編集後記~ 10年間の家族介護

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2年ぶりとなったスペシャルインタビュー。

第17回特集:スペシャルインタビュー | 介護の応援マガジン Live-up works

今回ご登場いただいたのは、シンガーソングライターの神部冬馬さん。あの『なごり雪』で有名なイルカさんのご長男です。僕が中学2年のとき、音楽の授業の課題でギターを弾くというのがあったのですが、そのときの課題曲がなごり雪だったんですね。

冬馬さんは音楽プロデューサーだったお父さん(故・神部和夫さん)の介護を10年間していたこともあり、そのときの苦労話もたくさん聞くことができました。パーキンソン病は徐々に体をむしばんでいく病気でもあるので、本人も家族も長い闘病生活を覚悟しなくてはなりません。

中学から大学1年生までと多感で遊びたい時期に介護が重なったことも冬馬さんの青春に少なからず影を落としたようです。冬馬さんは一人っ子。そしてお母さんは多忙なミュージシャンということもあり、必然的に冬馬さんが付きっ切りでなければならない時間も多くありました。しかし男同士で料理をしたりゲームをしたりと、和夫さんが多忙だったときとは打って変わって父子水いらずの時間を過ごせた思い出は、もしかしたら冬馬さんにとって宝物なのかもしれないな、と取材を終えてふと思いました。

病状の悪化とともに家族介護だけでは限界が生じ、途中からヘルパーが自宅に来るようになり、家族・ヘルパーで和夫さんのケアをする二人三脚の生活がスタートしました。和夫さんが亡くなってから10年が経ちますが、今でも当時のヘルパー、入院先の病院スタッフとも交流があるようです。それもやはり冬馬さんもイルカさんも、治療・介護に携わってくれた人たちへの「感謝」の気持ちがあるからこそ続いている付き合いなのでしょう。

先日の相模原市で起きた障がい者施設殺人事件の犯人は、障がい者への過剰な嫌悪感が募りに募って凶行へと及びましたが、警察の取り調べに、家族がまったく見舞いに来ないことへの不信感、不満も供述しています。

家庭での介護に限界がある、その延長として社会福祉があるのであって、「手に負えないので施設に入れました。後はお願い!」というスタンスでは家族としてやはり無責任だと思います。おそらく全国の施設でも、一向に来所しない家族への不信感、不満を抱いているスタッフは大勢いると思います。

少しでも時間を見つけて会いに行ってあげる、そしてそこでスタッフの人と色々話してみる。こういった信頼関係をコツコツ築いていくだけでも、福祉の現場って雰囲気が変わるのかもしれません。

 

「家族」でもできること

「家族」にしかできないこと

もう一度考えてみませんか?