猿一匹 酔って候

Live-up Works(リブアップ・ワークス)主宰、大西啓介のブログ。2012年からフリーライターとして活躍。企業のPR媒体から、ごみ、リサイクル問題、老人福祉などの分野をメインに取材・執筆活動を行う。現在は東京都豊洲市場に出入りして水産分野でも活動中。

スポンサーだけを見ているキャッチコピー

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以前、予備校に勤務していた友人に、予備校の広告(例えば新聞の折り込みチラシなど)はなぜあんなに数字の羅列ばかりで、デザイン性も希薄でセンスがないのか? と聞いたことがあります。「数字の羅列」というのはつまり「〇〇大学 △△名合格!」といった具合に、有名大学に何名の生徒を合格させたか、その学校名と人数をひたすら並べてあるだけのもの。どこの予備校も似たような内容なので、非常に面白みに欠けたものだと思いました。

すると彼の答えは「子どもを予備校に行かせるのは親。つまりカネを出すスポンサー(=親)に訴求できる内容であることが絶対条件なんだ」とのこと。デザインやセンスよりも数字が肝な世界なんだと納得しました。

さて、最近インターネットを見ていてちょっと気になった広告のコピーがあります。

親を預けたくなる老人ホーム

というキャッチコピー。つまりアットホームでとても居心地がよく、家族は安心して高齢者を預けられますよという点をPRしているものだと思います。

ただしこのコピーは、あくまで「両親をホーム(施設)に入れることを検討している家族」に向けたメッセージで、そこに肝心の入居者の意思は含まれていません。

実際、年老いた両親の意思とは関係なく、家族介護に限界を感じ有料老人ホームやサ高住などの受け入れ先を探している家庭も多いとは思うのですが、中には身寄りが居ない、家族に迷惑をかけたくないといった理由で、年金や退職金をねん出し、自ら進んでこういったホームを探している初老の方もいます。

予備校の場合、100%「スポンサー=親」というのが現実でしょうが、老人ホームの場合、100%「スポンサー=同居家族」とはなりません。

これからの高齢者はインターネットが使える世代も増えてきて、WEBでホームを探す高齢者も出てくることでしょう。同時に住み慣れた土地や家族と離れたくないという思いもあります。老人ホームの事業者も広告の制作者もポータルサイトの運営者も、もう少し入居者の心情を第一に鑑みた広告アプローチをしていく必要があるのでは? と思いました。