猿一匹 酔って候

介護の現場で働く人たちのための応援WEBマガジン「Live-up Worker」(リブアップワーカー)編集長大西のブログ。活動記録や日々思ったことなど綴っていきます。

車いす男性、介助拒否のニュースについて思う

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つい先日、車いすの男性が飛行機への搭乗の介助を職員に断られ、自力でタラップを登り搭乗したことがニュースで取り上げられました。

日本の航空会社、車いすの男性を自力で搭乗させる - BBCニュース

航空会社のバニラ・エアは、この措置は不適切だったと本人に謝罪しましたが、事前に車いす利用者であることを航空会社に連絡しなかったこの男性にも非があるとの声も上がり、ちょっとした騒ぎになっています。

足の不自由な人に対して、這いずりながらタラップを登らせるなんて非道な光景に映るかもしれませんが、設備が不十分な地方の空港で、大の大人をおんぶをして搭乗させるのは大変な危険がともないます。万が一、おんぶしたままタラップから転倒しようものなら、この男性も介助にあたった空港スタッフも大きなケガを負ってしまうことでしょう。「事前連絡なしで準備が整わず、かつ安全が担保できないのならば手は貸せない」。この航空会社の判断は決して間違いだったと責められるものではないと思います。

実はこの男性、木島英登さんは、車いすで世界各国を旅し、訪れた国々での出来事や各国のバリアフリーの現状などを自身のHPで紹介したり、いくつかの書籍を上梓したりしている方で、かつて私が携わった障がい者の支援雑誌に寄稿いただいたこともあります。

今僕の手元にある木島さんの旅行記では、南アフリカを訪れており、空港はもちろん、ホテル、レンタカーなどを利用する際も、すべて車いすユーザーであることを事前に告げず、その場で対応してもらったと書かれており、同国のバリアフリーの進み具合、そして働くスタッフの手際の良さに大きく感銘を受けていました。

今回のバニラ・エアの件では、事前に車いす利用者であることを連絡すれば、飛行機利用を断られる恐れがあったという理由で告げていなかったようですが、恐らく木島さんとしては、アポなしでどれくらい対応してもらえるものなのか、その国・地域、サービスを提供する会社のバリアフリーへの理解と対応度をありのままにブログなどを通じて波及しておきたかった。そんな思いがあったのかと思います。

僕が雑誌制作に携わった中で、障がい者ご本人とその家族は例外なく「諸外国のバリアフリー対策、そして人々の障がい者への理解が素晴らしい、日本では考えられない」と言っていました。翻せば、それは日本の未熟さを指摘するものであり、大きく後れを取っている法整備・教育に対する皮肉のようにも聞こえました。

今回のこの騒動は「どちらが悪いか?」という問題でなく、お互いのミスマッチ(不理解)が原因のように思えます。JALANAとは違い歴史の浅いLCC(格安航空会社)は、どういった対応をするべきなのか、バリアフリー対策と職員教育のノウハウのない会社の問題点が浮き彫りになったことだと思います。同時に「事前に断られると思った」という理由で連絡をしなかった木島さんですが、航空会社に猶予を与えれば、もしかしたら何らかの措置が取れたのかもしれません。

どうしても安全の観点から「できるorできない」という問題は起きてきます。ただ、これまでのトラブルを糧にして、企業と利用者(言い換えればハンディのない人とある人)がお互いができること、事前に配慮しておくべきことなどを洗い出して対策を取る、マニュアルを作っておけば、お互いのミスマッチの距離が少しずつでも縮んでいくのではないでしょうか。そういった努力や工夫が最終的に障壁を取り払う(バリアフリー)ものになるのだと思います。