猿一匹 酔って候

Live-up Works(リブアップ・ワークス)主宰、大西啓介のブログ。2012年からフリーライターとして活躍。企業のPR媒体から、ごみ、リサイクル問題、老人福祉などの分野をメインに取材・執筆活動を行う。現在は東京都豊洲市場に出入りして水産分野でも活動中。

原作に触れてみよう!

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去る2月16日、オランダの絵本作家・グラフィックデザイナーのディック・ブルーナさんが亡くなりました。ブルーナさんは、あの有名な「ミッフィー」の原作者で、日本でも絶大な人気を誇ります。日本ではアニメにもなって、ミッフィーのキャラをあしらったグッズなども多数販売されていますね。

世界中に数ある「キャラもの」ですが、ブルーナさんは独自のこだわりを作品に詰め込んだ人でもありました。イラストのキャラはすべて正面向き(たとえ体が横を向いていても)。絵本を読む子どもがしっかりと登場人物をキャッチできるよう、必ず対面にしていたそうです。色もシンプルに原色だけの色使いでした。

またミッフィーシリーズとは別に、車いすの主人公の作品も描いており、こういった発想が素直に出てくるのも、ノーマリゼーション教育に熱心な欧米ならではと言えるかもしれません。

 

ただ僕は男のせいか、少年時代にブルーナさんの作品にのめり込むようなことはありませんでした。代わって好きだったのが『機関車トーマス』シリーズでした。

機関車トーマス』シリーズは、フジテレビの『ひらけ!ポンキッキ』の番組内でアニメ化されたことで、日本でも一躍人気キャラとなりました。しかしこの『機関車トーマス』という名前は、日本の会社が番組の制作上付けた邦題であって、本来は『汽車のえほん』という名前でポプラ社から出版されていたものです。さらに遡れば、原作はイギリスの牧師ウィルバード・オードリーさんが子どもたちに読み聞かせる物語から始まりました。小さいころ、この絵本が大好きで、毎週のように図書館に行き、シリーズ全巻をしっかりと読破しました。まあ小さいころから電車が好きというのが関係していたのでしょうが…

アニメは詳しく観ていないのですが、オリジナルは巻ごとに主人公の機関車が異なり、決してトーマスありきではないんですね。きれいなイラストに個性豊かな機関車たち。僕のイギリスかぶれもこのころから始まったのではないかと(笑)。

結構な数の作品が刊行されましたが、合計3人の画家がイラストを描いています。最後の方の作品になるにつれ、劇画チックな油絵のタッチになっていき、正直子どものころは後期の作品があまり好きになれませんでした。それでも一つの作品内で生じるいくつかの変化も、その作品の個性を際立たせるエッセンスのような気もします。

ジオラマを使用したアニメも高い評価は受けているみたいですが、背景ののどかな田園風景の再現など、ディテールまでは忠実に絵本を再現しておらず、やはり物足りなさを感じます。トーマスシリーズに限らず、どうしても日本で販売(放映)されるものは日本人の嗜好にアレンジされていたり、CG技術の発達と引き換えに、作品の微妙な表現のニュアンスが失われていたりします。

ポンキッキのアニメを機にトーマスファンになってくれた子がいたら、それは先輩(?)としてうれしいですが、彼らやお母さんたちにこう言いたい。

ぜひ原作を読んでみろ!!

今やディズニーのキャラクターとして、すっかり市民権を得ている『くまのプーさん』だって、元はイギリスのA.A.ミルンの作品。こちらの原作も、イギリスの田舎の様子が描かれている味わい深い作品です。

洋書を取り扱っている本屋、または中古市場などを探せば原作も手に入ることでしょう。海外旅行のときに本屋を巡ってみるのもいいかもしれません。

「故きをたずね、新しきを知る」ことも、一つの作品を十分に楽しむために必要な気がします。