先月のニュースになりますが、厚生労働省と財務省が来年度の予算編成で、大病院の周辺に店舗を構える、いわゆる「門前薬局」の調剤報酬を下げ、地域にあるかかりつけの薬局の報酬を上げるそうです(※以下記事、最後まで読むには会員登録が必要)。
「門前薬局」報酬下げ 厚労・財務省「かかりつけ」手厚く :日本経済新聞
記事の冒頭部には書かれていませんが、こういった門前薬局はユーザー(患者)の服薬まで管理しておらず、「かかりつけ」の機能を果たしていないと評されています。私見ですが、大病院VS町中のかかりつけ病院という対立構造を薬局にまで広げて論じているような気もしました。
なんとなくですが、日本では「個人開業医=庶民の味方」であって、大病院はどこかビジネス的な冷たい対応で、医師同士による権力争いが絶えない伏魔殿のようなイメージを抱いている人が多いんじゃないかと思います。TVドラマの影響もあることでしょう。
しかし町医者は、日ごろのかかりつけの患者の容態は把握しているでしょうが、複雑な検査が必要になった場合や、手術が必要なほどの大病を患った患者に対しては、紹介状を書いて結局は大病院に任せる手段を取ります。人間いつまでも元気で生きられるわけではないですし、どちらの存在も私たちの強い味方であるはずです。
僕も20代前半のころ、某都立病院で医療事務をやっていました。病院は24時間体制で、当直医は昼間の自分の仕事を終えてから当番制で夜の緊急診療に備えていました。大体30代くらいの若い医師が多いのですが、眠そうにしている人、から元気で明るく振る舞っている人、皆さん本当に大変な思いで勤務にあたっていたことだと思います。
政治に大きな影響力を持つ「日本医師会」ですが、これは個人開業医による集まりの団体で、自分たちの名誉や利権は守るが、大病院に勤務する医師のことはどこ吹く風というスタンスです。その証拠に大病院は医師不足に泣かされているところが多いですが、開業医(歯科は除く)が人手不足でつぶれているという話はほとんど聞きません。
今回の調剤報酬改定も、大病院サイドに不利となる改定です。確かに町医者は心強い存在かもしれませんが、大病院でボロボロになりながら深夜の急病や事故に備えている若い医師たちの存在も決して無視してはいけないはずです。どちらが生命の危機に瀕するケースが多いことか一目瞭然でしょう。