猿一匹 酔って候

Live-up Works(リブアップ・ワークス)主宰、大西啓介のブログ。2012年からフリーライターとして活躍。企業のPR媒体から、ごみ、リサイクル問題、老人福祉などの分野をメインに取材・執筆活動を行う。現在は東京都豊洲市場に出入りして水産分野でも活動中。

『介護再編』を読んで

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最近あまり介護・福祉系の本を読んでいなかったので久々に新冊を購入。

高齢化社会を迎えるにあたり、介護事業者はどのようなイノベーションや人材育成に努めていけばよいのか、そういった指南が書かれた一冊。

もともと介護は、介護保険制度がスタートする2000年前までは医療法人や社会福祉法人といった団体の専売特許であったのですが、2000年以降民間(株式会社)の参入が認められ今や玉石混交。もともと営利団体でない法人は人材育成や競争感覚に鈍感であり、新たに参入した株式会社は介護事業のノウハウに長けた所ばかりではなく、事業撤退も後を絶たない状態です。

今改めて、法整備はもとより、法人・株式会社問わず介護事業所自体ができることを模索して、改めて体系化していくことで、仕事のやりやすさ、離職の防止、ひいては介護サービスを受ける利用者、入居者の幸せにつなげていけるためにできることは何か考えようじゃないか。そういった精神を読者に投げかける一冊です。

当然、経営者、事業主や施設長といった職種の人たちに向けた箴言(しんげん)になるわけですが、僕個人としては、普段高齢者と関わりのない、介護に興味がないといった層に読んでほしいと思います。

著者の藤田さんと武内さんは、ほぼ一貫して介護ビジネスの未熟さを指摘、問題提起しています。ただ裏を返せばそれだけ可能性を秘めた分野であるとも言えます。高齢者と関わりがなく介護に興味がない人たちの多くは、「老後は年金や退職金でなんとかなる」「子どもが面倒みてくれるだろう」といった「何となく」の感覚でしか高齢化社会を捉えていないような気がします。そして未熟である以上、約束された部分が少なく、私たちが想像できないような無慈悲な措置が近い将来取られるかもしれません。

今現在「プレイヤー」でない人だからこそ、介護業界の現状を知って、今の自分にできること、備えられることを考えてみてほしいと思います。藤田さん自体も“介護業界の寵児”と言われ、ベンチャー的な目線で介護を考えている方です。もしかしたら、本を読んだ別業界の人が何かインスピレーションを得るかもしれません。そして、他産業のすばらしいアイデアとコラボレーションでもできれば、思わぬシナジー効果が生まれるかもしれません。