猿一匹 酔って候

Live-up Works(リブアップ・ワークス)主宰、大西啓介のブログ。2012年からフリーライターとして活躍。企業のPR媒体から、ごみ、リサイクル問題、老人福祉などの分野をメインに取材・執筆活動を行う。現在は東京都豊洲市場に出入りして水産分野でも活動中。

日本製鉄のUSスチール買収計画に思う

日本製鉄による米USスチールの買収計画。動向が気になるところでしたが、US社の臨時株主総会で承認されたのとことで、買収はほぼ決定的になると思います。

 

僕もかつては旧新日鉄関連の仕事をしていたのですが、今回の買収計画にはどうも疑問符が付きます。遡ること16~17年ほど前になりますが、当時新日鉄は、鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミッタル社に敵対的TOBを叩きつけられ、旧住友金属神戸製鋼との3社間で相互株式保有をすることで、買収を阻止した過去があるからです。

 

このとき、社内からは「モノづくりに注力してきた日本の産業を、簡単に外資に売り渡すことはできない」という声が少なからず聞こえてきました。アルセロール・ミッタル社は、インド人のミッタルという成金が興した会社で、実際のところ片っ端から鉄鋼メーカーの買収を重ね会社をデカくしただけの、技術力の低い会社でした。その会社が欧州随一のアルセロール社を手中に収め、一躍世界最大のメーカーにのし上がったのです。そしてアルセロール社の買収からほどなくして、ミッタルは新日鉄の技術力に目を付けたという流れです。

 

現在の日鉄には、敵対的買収を持ちかけられた当時の役員は残っていないでしょう。ただ、あれほど買収されるのを拒んできた会社が、わずか20年足らずで今度は敵対的買収を吹っ掛ける立場に変わってしまった。もうモノづくりの美学だけでは日本の鉄鋼メーカーは生き残っていけないということなのでしょうか。

 

今回の買収計画には、次期大統領候補のバイデン、トランプともに反対を表明しています。進めば茨の道は確実。それでも買収に踏み切るのでしょうか。