猿一匹 酔って候

Live-up Works(リブアップ・ワークス)主宰、大西啓介のブログ。2012年からフリーライターとして活躍。企業のPR媒体から、ごみ、リサイクル問題、老人福祉などの分野をメインに取材・執筆活動を行う。現在は東京都豊洲市場に出入りして水産分野でも活動中。

ヒーローの条件

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一昨日の春分の日、妹の新築祝いに行ってきました。今年で2歳になる甥っ子は「アンパンマン」が大好き。旦那さん方のいとこからいただいた、初期のアンパンマンの絵本を見つけました。

表紙を見ると、なんともさえない顔つきで、今のかわいらしいアニメの描写とは似ても似つきません。

ストーリーは、砂漠の中でさまよう旅人に顔を分け与え、次のお腹を空かせて困っている人にも顔を与えて、最後はパン工場のエントツに逃げ込んでジャムおじさん(ただしこのころは名前なし)に新しい顔を作ってもらう、といった内容。現在のアニメでも顔を分け与えるシーンは出てきますが、顔の一部をちぎって渡すレベルではなく、一人目の旅人には顔の約半分を、もう一人の人にも残り半分を分け与え、最後は首から上がないかなり気味悪い状態で空を飛びます。

こんな不気味なヒーローをなぜ絵本にしたのか。巻末の作者のコメントを読めばすべてがわかります。作者のやなせたかし氏は、もともとヒーローものを描きたかったようですが、「颯爽と現れて、ほぼ無傷の状態で悪者をやっつけ去っていく」といった従来のヒーロー像に疑問を感じ、一石を投じたかったようです。

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「正義を守ろうと思えば必ず自分も傷つくし、犠牲や献身なくして正義は成り立たない」

こう残しています。確かにアニメのアンパンマンも顔の一部が欠ければパワーダウンしますよね。

読んでいるうちに、小学生のときに国語の授業で習った足尾鉱毒問題の「田中正造」を思い出しました。明治時代、渡良瀬川に流出した鉱毒問題解決のため人生をかけた政治家です。私財のほとんどを売り払い活動資金に充て、明治天皇に訴状を持って直訴し問題解決に努めました。

当時の情勢を考えると、無断で天皇に近づけば死罪すら可能性があったことだと思います。それでも信念があったからこそ、地元民のために貫かなければならない「正義」があったからこそこのような行動に移せたのだと思います。

「No Pain No Gain(痛みなくして得られるものはない)」

口先だけうまいことを言う人は大勢いますが、誰の心も打たない、何の結果も残せてないのは、自己を犠牲にしてまでやりとげたい“強い思い”がないからなのではないでしょうか? 今の時代、本当のヒーローっているのでしょうか?