昨年末の話になりますが、大みそかにテレビ東京で放送される『年忘れにっぽんの歌』の公開収録を観にいきました。友だちが株主優待でチケットを2枚持っていたので招待されました。
去年の放送では、表舞台から一線を引くようになった北島三郎が参加。弟子たちに囲まれながら車いすでステージに登場しました。
印象深かったのが、「『サブちゃん』という愛称で呼ばれるのは幸せ。こないだ見ず知らずの小さな子に『サブちゃん!』と声をかけてもらえて、すごくうれしかった」というエピソードを語ってくれたことです。
一般的に、年上の人に対して「ちゃん」を付けて名前を言うのは失礼にあたります。この「ちゃん付け呼び」は介護業界でもたびたび問題になっており、利用者に対して「○○ちゃん」と呼ぶ職員が、意外と少なくないことが分かっています。実のところ、僕がヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)を取得したときに実務研修で行った特別養護老人ホームでも、「ちゃん」付けで呼んでいる職員を目の当たりにしました。
でも、このサブちゃんのエピソードを聞いて、必ずしも、目上の人に対する「ちゃん」付けは失礼に値しないのかもしれない、と自分の中で考えが揺らぎました。職員と利用者。この両者は毎日ほぼ毎日顔を合わせています。ずっと敬語ばかりの堅苦しい会話を続けていたら、そっちの方が不自然で息苦しいものです。
加えて、僕自身が豊洲市場で働くことになったことも関係しているかもしれません。人であふれていて、ターレ(運搬車両)やフォークリフトが高速で行き交う魚の現場では、時に声を荒げないと危険が付きまといます。実際、魚を買いに来ている人に対して、最低限の敬語は使うものの、うやうやしく接しているシーンは皆無。スピードが求められる現場でそんな人がいたら完全に場違いです。実際に僕も、年上の人に対して怒鳴りつけるような口調で話しかけることもあるので…… たぶん僕も河岸人間にカスタマイズされてきてしまったということでしょう(笑)。
研修のときに「ちゃん」付けを聞いて、不快に感じたのは事実です。でも当事者同士にしかわからない関係があるのだし、外野がとやかく言うことは、やはり野暮なんだなと今は思う次第です。ハイ。