猿一匹 酔って候

Live-up Works(リブアップ・ワークス)主宰、大西啓介のブログ。2012年からフリーライターとして活躍。企業のPR媒体から、ごみ、リサイクル問題、老人福祉などの分野をメインに取材・執筆活動を行う。現在は東京都豊洲市場に出入りして水産分野でも活動中。

ピークの持っていき方

先日のサッカーワールドカップの日本対コスタリカ戦。ドイツに勝利し、勢いそのままにしっかりと勝利を収めてくれるのかと思いきや、後半終了近くにゴールを許し敗戦。この敗北を機に、一切にマスコミは敗因分析という名の代表チーム批判に転じました(手のひらクル~というやつね)。

集められた批判の内容に目を通してみると、「守備的にいった」「主力を温存した」など消極的な采配を挙げているものが目立ちました。ケガ人が多数出ている現実もありますが、要は相手をナメていた節があるということ。そしてその隙を突くかのようにチームは点を取ることなく敗れてしまいました。3戦目に、これまた強豪のスペイン戦を控えていたこともあり、3試合の中のどこかで手を緩める必要があったのかもしれません。日本人はこの“手を緩める”ことが欧米人と比較してどこか下手なような気がします。

昔、インテリアを手掛ける業者の方にインタビューしたときに言っていたことですが、その社長いわく、日本人は平均して良い仕事を継続する(できる)のに対し、外国人はピークを配分するため、日や時間帯によってクオリティにバラツキがある、とのこと。このとき一緒に仕事をしたのはフランス人だったのですが、約束の時間には来ないし、来てもすぐに仕事を始めず、図面を眺めてただ話し込んでいるだけで、見ていて少しイラつきを覚えたようです。でも、仕事の一番重要な局面に差し掛かると、今までの怠慢がウソだったかのように一気に集中し始め、日本人も驚くようなクオリティの高い作品を仕上げてしまったそう。

僕も似たような経験があります。アメリカのフェンダー社のギターで定価30万円近くするギターを楽器店で試奏したときのこと。高いギターなので、作りもしっかりしているのかと思いきや、フレットの打ち込みが超雑で、手をスライドさせると親指の内側部分に、わずかに飛び出たフレットがゴツゴツ当たり、痛くて弾けたもんじゃありませんでした。

↑コレと同じギター

フェンダーはライセンス契約した日本製のギターもあるのですが、日本製ではこのような粗悪品は皆無。値段も5~6万円で高品質の物が買えるのです。多くのプロギタリストが口をそろえるには、アメリカ製のギターは「あたり・はずれ」が大きく、あたりの1本が放つサウンドは、日本が得意とする「品質」の概念すら凌駕する、本当に最高な物なんだそうです。

単純にサッカーと、成果物であるインテリアやギターとを比較するのは難しいでしょう。それでも愚直に、常に平均点以上のところを狙うのが日本人の特徴であり、良さのような気がします。もちろん、それだけでは世界の頂点には立つことは難しい。それでも「下手にペース配分せず、平均点以上を狙う」というベースが第一にあるのだと思います。

かつて日本代表を率い、今年5月に亡くなったイビチャ・オシムは「考えて走る」サッカーを提唱していました。日本が世界の強豪国相手に勝つために、まずは相手より多く走りなさいと説いていました。オシムはこのときから日本人の特性を理解していたんだなあとつくづく実感します。