先日本棚を整理していたら、こんな本が出てきました。
青森県でリンゴ農家を営む木村秋則さんの半生を綴った書籍。2013年には映画化もされ、この本の存在は多くの人に知られることとなりました。
ざっくりとした内容は、リンゴの害虫に悩まされていた木村さんが、あることがきっかけで、従来当たり前とされていた農薬使用を一切止めて、厳しい自然環境の下、植物本来が持つ自然の力を引き出して、リンゴの栽培を軌道に乗せた… というサクセスストーリーです。本の表紙の人懐っこい笑顔が印象的な木村さんですが、実際のところ、いくら試行錯誤してもリンゴ栽培がうまくいかず、自殺の一歩手前まで追い込まれて苦しんでいました。成功した後も、農薬を売り付けたい農協との軋轢みたいなことも書かれていたような気がします。
この本を入手したのは2009年。実は自分で見つけて買ったわけではなく、僕が以前勤務していた広告代理店の、2歳年上の先輩社員が僕の退職時にプレゼントしてくれたものです。その先輩は女性で、チャランポランな僕に対しても良く接してくれていた反面、やはり女性特有の気まぐれというか、自分の機嫌が悪い時にはあまりに理不尽な理由で怒られたりもしました。そんな彼女から本をプレゼントされたのは意外でした。この本に込められたメッセージを改めて回顧してみると、
「常識にとらわれるな」
「巨大権力に屈するな」
「自分を信じ、我が道を行け」
という、彼女なりの僕へのエールだったのではないかと思うんです。当時の僕は環境関連の編集をしていたこともあって、「大西君は環境問題に熱心だから…」と言って手渡してくれましたが、そんな理由は二の次だったと思います(もしかしたら、僕の考えすぎかもしれないけど…)。
人にプレゼントを贈るときに、本の内容を通じてどのようなメッセージを相手に伝えられるのか。本を贈る意義みたいなものを、実感できるエピソードだったのではないでしょうか。